外国人材の採用・雇用継続に欠かせない在留資格の手続き。その手数料が、45年ぶりに大幅見直しされることになりました。2026年3月10日に閣議決定・国会提出された入管法改正案は、同年5月29日に参院本会議で可決・成立しています。本記事では、手数料引き上げの内容と、外国人を雇用する企業が備えるべきコスト対策を解説します。
何が変わるのか:手数料の法定上限が引き上げ
現行の入管法では、在留期間の更新、在留資格の変更、永住許可のいずれについても、手数料の上限は一律1万円と定められています。この水準が定められたのは1981年で、実に45年間見直されてきませんでした。今回の改正では、この法定上限が次のように引き上げられます。
在留資格変更・在留期間更新:上限10万円
永住許可:上限30万円
「上限」であって即座に全額になるわけではない
注意したいのは、今回改正されたのはあくまで法律上の「上限額」である点です。実際に企業や外国人本人が負担する具体的な金額は、今後定められる政令によって決まります。報道では、永住許可で20万円程度、更新手続きで数万円程度への引き上げが検討されているとされていますが、正式な金額は今後の政令公布を待つ必要があります。
なぜ今、手数料が見直されるのか
在留審査の申請件数は年々増加しており、外国人労働者数も257万人を超えて過去最多を更新しています。審査体制の強化やデジタル化には相応のコストがかかるため、受益者負担の観点から手数料水準を見直す動きが進んでいます。1万円という現行水準は諸外国の類似手続きと比較しても低い水準にあるとの指摘もあり、今回の改正はこうした背景を踏まえたものです。
法案成立までの経緯
| 時期 | 出来事 |
| 2026年3月10日 | 入管法改正案を閣議決定、国会に提出 |
| 2026年3月〜5月 | 国会での審議、支援団体等からの意見表明 |
| 2026年5月29日 | 改正入管難民法が参院本会議で可決・成立 |
| 今後 | 具体的な徴収額を定める政令の公布・施行 |
改正法はすでに成立していますが、企業や外国人本人が実際に負担する金額は政令の公布を待つ必要があります。施行時期についても今後の政令で明らかになるため、公布のタイミングを見逃さないようにしましょう。
外国人本人への影響と企業のフォロー
手数料の負担者は本人であるケースが一般的ですが、企業によっては採用条件の一環として、更新手数料や申請サポート費用を会社負担としているところもあります。手数料が数万円規模に引き上げられれば、本人負担とする場合、外国人材にとって決して小さくない出費になります。特に若手や来日間もない人材にとっては家計への影響も大きいため、会社として一部補助を検討することは、他社との差別化や定着率向上の観点からも有効な選択肢です。
よくある質問
Q. すでに申請済みの手続きにも新しい手数料が適用されますか?
政令の施行日以降に申請する手続きが対象になるのが一般的な考え方です。ただし正式な適用範囲は政令の内容次第となるため、更新時期が近い場合は最新情報を随時確認してください。
Q. 手数料以外にも今回の入管法改正で変わる点はありますか?
在留手続き全体の見直しの一環として審査の効率化やデジタル化も進められる見込みです。手数料の議論とあわせて、申請フロー自体の変化にも注目しておくとよいでしょう。
企業への影響を試算
更新手続きが多い企業ほど影響が大きい
特定技能・技術人文知識国際業務などの在留資格は、1年〜5年ごとに更新が必要です。多数の外国人材を雇用する企業では、更新手続きにかかる費用が年間を通じて積み上がります。仮に更新手数料が数万円になった場合、これまで実質無料に近かった行政手数料が、無視できないコスト項目に変わります。
永住許可サポートのコスト構造も変化
永住許可の取得を支援する企業にとっても、上限30万円という水準は無視できません。永住者は就労制限がなく採用しやすいというメリットがあるため、企業が取得をサポートするケースもありますが、その際のコスト試算を見直す必要が出てきます。
企業が取るべき対策
更新スケジュールと予算計画の見直し
在留期限を一元管理している企業は、更新のたびに発生する手数料を年間コストとして予算化しておくことをおすすめします。特に複数名の外国人材を雇用する企業では、更新時期が集中しないよう採用計画を分散させることも一案です。
行政書士費用とあわせたトータルコストの把握
手数料に加えて、行政書士への依頼費用(3万〜8万円程度が目安)も発生します。手数料引き上げにより、1件あたりの在留手続きにかかるトータルコストが上昇することを前提に、採用計画全体のコスト試算をアップデートしておきましょう。
早めの申請でスケジュールに余裕を持たせる
制度移行期には運用が変動しやすく、審査に時間がかかるケースも想定されます。在留期限の3〜6か月前を目安に、余裕を持って更新手続きを進める体制を整えておくと安心です。
まとめ
– 2026年5月29日、在留手続き手数料の上限を引き上げる改正入管法が成立した
– 更新・変更の上限は10万円、永住許可の上限は30万円に設定される
– 実際の徴収額は今後の政令で決まり、永住20万円程度・更新数万円程度が検討されている
– 現行水準は1981年から45年間据え置かれており、審査体制強化を背景とした見直し
– 企業は更新コストの予算化と、行政書士費用を含めたトータルコストの把握が必要
参考
– 行政書士 堺国際支援オフィス「【2026年最新】入管法改正案が閣議決定。在留手続き手数料の大幅引き上げへ」https://sakai-support-office.com/2026/03/23/%E3%80%902026%E5%B9%B4%E6%9C%80%E6%96%B0%E3%80%91%E5%85%A5%E7%AE%A1%E6%B3%95%E6%94%B9%E6%AD%A3%E6%A1%88%E3%81%8C%E9%96%A3%E8%AD%B0%E6%B1%BA%E5%AE%9A%E3%80%82%E5%9C%A8%E7%95%99%E6%89%8B%E7%B6%9A/
– 行政書士田原靖弘事務所「在留手数料が最大30倍に引き上げ|2026年入管法改正で企業と外国人がやるべきこと」https://www.gyouseisyoshi-tahara.com/blog/immigration-fee-hike-2026-impact-guide
– 難民支援協会「『入管法改正案』における在留資格の手数料引き上げに対する意見」https://www.refugee.or.jp/report/refugee/2026/03/post-20164/
– 出入国在留管理庁「在留資格認定証明書交付申請」https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-3.html