「外国人を採用したけれど、現場とうまく馴染めずに辞めてしまった」 この失敗パターンの原因は、9割が「受け入れ体制(オンボーディング)の欠如」にあります。
オンボーディングとは、新入社員を組織の一員として定着させ、早期に戦力化するための一連のプロセスのこと。 特に「文化」も「言語」も異なる外国人材の場合、日本人と同じ「見て覚えろ」は通用しません。
社長や人事が主導して、現場に「受け入れの土壌」を作らなければ、どんなに優秀な外国人も枯れてしまいます。 では、具体的に何をすればいいのか? 3つのフェーズで解説します。
フェーズ1:【入社前】外国人ではなく「日本人社員」を教育せよ
最大の盲点はここです。 オンボーディングの対象は外国人だけではありません。「受け入れる側の日本人社員」の心の準備こそが最優先です。
現場の日本人は、トップダウンで急に外国人が来ることに不安と不満を持っています。これを放置してはいけません。
① 「なぜ採用するのか」をトップが語る
「人がいないから仕方なく」という態度は絶対に見せてはいけません。 社長や工場長が、以下のメッセージを明確に伝えてください。
「会社が生き残るために、彼らの力が必要だ」
「彼らは単純労働者ではなく、将来の仲間だ」
「最初は苦労をかけるが、会社全体でバックアップする」
② 「やさしい日本語」の研修を行う
「日本語が通じない」と嘆く現場の多くは、日本人の話し方が難しすぎることが原因です。 現場リーダー層に「やさしい日本語」への言い換えルールを周知してください。これだけでトラブルは激減します。
| ついつい言ってしまう言葉 (あいまい・難しい日本語) | 伝わる「やさしい日本語」 (具体的・簡単な日本語) | ここがポイント! (経営層・人事の視点) |
|---|---|---|
| 「徹底してください」 | → 「必ずやってください」 | 【抽象語を避ける】 「徹底」は概念的で伝わりにくい。「必ず」と強い行動を促す。 |
| 「なるべく早く」 | → 「3時までに」 | 【数字で伝える】 「早い」の基準は国や人によって違う。具体的な期限(数字)を示す。 |
| 「適当にやっておいて」 | → 「マニュアルの通りに作ってください」 | 【あいまい指示は厳禁】 「適当(ちょうど良い加減)」は高度な文脈理解が必要。混乱の元。 |
| 「火気厳禁(かきげんきん)」 (張り紙や口頭注意で) | → 「ここで火を使ってはいけません」 | 【熟語を避ける】 難しい漢字の熟語は、簡単な「動詞」の文に分解する。 |
| 「理解できましたか?」 | → 「わからないことはありますか?」 | 【質問を変える】 「はい」と言わせる質問を避ける。不明点を確認しやすい聞き方にする。 |
そのほか、
擬音語を使わない: 「サッと」「ガバっと」は通じない
二重否定を使わない: 「〜しなくちゃいけない」→「〜してください」
💡 導入のメリット
日本人の話し方を少し変えるだけで、外国人材の作業ミスや安全に関わるトラブルは劇的に減ります。「日本語が通じない」のではなく、「伝え方が難しすぎる」ケースが大半です。
フェーズ2:【入社1ヶ月】「メンター制度」で孤独を消す
入社直後、外国人が最も恐れているのは「孤立」です。 業務を教える上司とは別に、「相談役(メンター/バディ)」を年齢の近い日本人社員から1名任命してください。
メンターの役割は「業務指導」ではない
その通りです。特定技能の受け入れには、法律で定められた「支援」が義務付けられています。

メンターの役割は、仕事を教えることではありません。「組織のルールと文化」を教えるガイド役です。
・自動販売機の使い方、ゴミの捨て方
・社員食堂での注文の仕方
・「お疲れ様です」のタイミング
💡メンター役の日本人社員には、人事評価でプラス査定をするか、手当(月数千円でも)を支給してください。「業務外の負担」と捉えさせない工夫が重要です。
フェーズ3:【定着】文化の違いを「ルール」で解決する
「あいつらは常識がない」 現場でこう言われる原因のほとんどは、悪気があるのではなく「文化の違いを知らないだけ」です。 「空気を読め」は通用しません。明文化したルールが必要です。
① 宗教・習慣への配慮を「特別扱い」にしない
例えば、イスラム教徒の「お祈り」の時間。 これを「サボり」と見なされると現場は崩壊します。「1日2回、休憩時間を使って5分間のお祈りを許可する」と会社として公式ルール化し、日本人社員にも「これは文化である」と説明してください
② 叱る時は「サンドイッチ話法」で
多くの外国文化圏では、人前で叱責されることは「最大の恥」であり、即退職につながります。 注意する際は、必ず別室で。そして以下の順番で伝えてください。
1.肯定: 「いつも頑張ってくれてありがとう」
2.修正: 「ただ、この作業はもっと丁寧にやってほしい」
3.期待: 「君ならできると信じているよ」
【現場の不安を解消】外国人材の「給与交渉」と「文化の壁」を乗り越える最強の定着術
「給与」に関するトラブルは、文化の違い以上に深刻な退職理由になります。具体的な給与交渉や契約の透明性について、詳しく説明をしています。

結論:オンボーディングは「コスト」ではなく「投資」
手間がかかると思いましたか? しかし、この手間を惜しんで採用した外国人が3ヶ月で辞めてしまったら、採用コスト(数十万円)と現場の労力はすべて水の泡です。
逆に、しっかりオンボーディングを行い、彼らが「この会社は自分を大切にしてくれる」と感じれば、彼らは友人や家族を紹介してくれます。つまり、採用費ゼロで優秀な人材が集まる「好循環」が生まれるのです。
現場任せにせず、会社全体で「ようこそ!」と言える体制を作る。 それが、人手不足時代を勝ち抜く最強の経営戦略です。