【この記事の要点】
– 自動車運送業の経営者調査では、外国人ドライバーの受入れ体制が未整備の企業が73.6%にのぼりました
– 受入れには、事業許可、認証の取得、協議会への加入、日本人と同等以上の報酬など、満たすべき要件があります
– 運転者本人には、日本の運転免許(在留資格の申請前に取得)、日本語、評価試験の合格が求められます
– 体制づくりは、「要件の確認→協議会→支援体制→運転者の要件→教育→生活支援→社内の合意」の順で進めると整理しやすくなります
– 最初から完璧を目指さず、少人数で試しながら広げるのが現実的です
「興味はあるが、何から始めればよいか分からない」——外国人ドライバーの受け入れを検討する運送会社から、こうした声をよく聞きます。調査でも、受入れ体制が未整備の企業が7割を超えています。本記事では、体制づくりを7つのステップに分け、各ステップで確認すべき点をチェックリストの形で整理します。最新の動向は、「特定技能ドライバーの受入れ最新動向(2026年)」の記事もあわせてご覧ください。
まず確認:受入れ企業の主な要件
特定技能「自動車運送業」で外国人ドライバーを受け入れる企業には、次のような要件があります。
| 項目 | 内容 |
| 事業許可 | トラックは、一般貨物自動車運送事業など、関連する許可を受けていること |
| 認証 | トラック区分は「働きやすい職場認証制度」または「Gマーク(安全性優良事業所)」のいずれかの取得が必要 |
| 協議会 | 自動車運送業分野の特定技能協議会に加入すること |
| 報酬 | 日本人と同等以上の報酬であること |
| 法令遵守 | 労働関係法令、社会保険、租税の法令を守っていること |
| 労働時間 | 改善基準告示(2024年の改正に対応)に適合すること |
| 支援 | 特定技能1号の支援(10項目)を、自社または登録支援機関への委託で実施すること |
タクシー・バスの区分では、認証の要件などが異なります。最新の要件は、国土交通省・出入国在留管理庁の案内で確認してください。
体制づくりの7ステップ
ステップ1:受入れ要件を点検する
上の表をもとに、自社が要件を満たしているかを確認します。特に、「働きやすい職場認証」や「Gマーク」を取得していない場合は、取得に時間がかかるため、早めに着手する必要があります。
– 事業許可の種類は、受入れ区分に合っているか
– 認証(働きやすい職場認証 または Gマーク)を取得しているか
– 日本人ドライバーと同等以上の報酬になっているか
– 改善基準告示に適合した運行・勤務の管理ができているか
ステップ2:協議会に加入する
自動車運送業分野の特定技能協議会への加入は、受入れの前提条件です。申請の前までに加入が必要とされているため、採用活動と並行して、早めに手続きを進めましょう。
ステップ3:支援体制を決める
特定技能1号の外国人には、次の10項目の支援を行う必要があります。
1. 事前ガイダンス
2. 出入国する際の送迎
3. 住居の確保・生活に必要な契約の支援
4. 生活オリエンテーション
5. 公的手続きへの同行
6. 日本語学習の機会の提供
7. 相談・苦情への対応
8. 日本人との交流の促進
9. 転職の支援(会社の都合による離職の場合)
10. 定期的な面談と、行政機関への通報
自社でこれらを実施するか、登録支援機関に委託するかを決めます。調査では、受入れ体制が未整備の理由として「私生活をサポートできる体制がない」が26.9%を占めていました。生活面の支援は、外部に委託するのも有効な選択肢です。
ステップ4:運転者の要件と、免許の取得方法を確認する
運転者本人には、次のような要件があります。
免許:トラックは第一種運転免許、バス・タクシーは第二種運転免許を持っていること。在留資格を申請する前に取得している必要があります
日本語:トラックは日本語能力試験N4(またはJFT-Basic)、バス・タクシーはN3
評価試験:自動車運送業分野特定技能1号評価試験への合格
免許の取得は、教習所に通う方法(「特定活動」で入国して教習を受ける)か、外免切替のいずれかです。外免切替は2025年10月に厳格化されており、時間と費用の見通しが重要です(詳しくは「外免切替の厳格化後、外国人ドライバー採用はどう変わる?」を参照)。
ステップ5:教育・運行管理の体制を整える
調査で「受入れや教育のノウハウがない」と答えた企業は27.4%でした。次のように、段階的に整えるのが現実的です。
座学:日本の交通ルール、運行管理の基本、事故時の対応を学ぶ時間を設ける
同乗指導:日本人の先輩ドライバーが同乗し、ルートや荷役を教える期間をつくる
点呼・運行指示:やさしい日本語、図、翻訳したメモなどで、指示が確実に伝わる工夫をする
記録:指導の内容や本人の習熟度を記録し、乗務の範囲を段階的に広げる
ステップ6:生活支援の準備をする
住居、銀行口座、携帯電話、住民登録、マイナンバーなど、来日直後の生活の立ち上げを支える準備をします。住民登録・銀行口座・SIM契約については、当ブログの別記事も参考になります。入社前から生活支援の計画を立てておくと、本人の安心感が高まります。
ステップ7:社内の理解と予算を確保する
現場の日本人ドライバーや運行管理者に、受け入れの目的、進め方、困ったときの相談先を共有します。また、次のような費用や工数を見積もっておきましょう。
– 人材紹介、登録支援機関への委託にかかる費用
– 免許の取得にかかる費用と期間
– 教育・同乗指導にかかる時間(現場の担当者の工数)
– 住居や生活の立ち上げにかかる費用
自己点検表
| 点検項目 | 状況(○・△・×) |
| 認証(働きやすい職場認証 または Gマーク)を取得している | |
| 協議会への加入手続きを進めている | |
| 支援10項目を、自社または委託で実施できる | |
| 運転者の免許の取得方法と期間を把握している | |
| 同乗指導・点呼の体制がある | |
| 生活支援の担当者または委託先が決まっている | |
| 現場への説明が済んでいる | |
| 予算を見積もっている | |
△や×がついた項目から、優先順位をつけて対応しましょう。
失敗しやすいポイント
– 認証や協議会の手続きが後回しになり、採用が決まってから時間がかかる
– 免許の取得にかかる期間を短く見積もり、計画がずれる
– 教育を特定の1人に任せきりにして、現場が疲弊する
– 生活支援が手薄で、入社後すぐに本人が孤立する
– 現場の理解を得ないまま受け入れを進め、日本人ドライバーとの摩擦が生じる
よくある質問
Q. 認証を取得するのに、どのくらい時間がかかりますか?
認証の種類や、自社の状況によって異なります。取得に必要な要件や審査の期間は、認証を行う団体の案内で確認し、採用計画に余裕を持って組み込んでください。
Q. 登録支援機関に、すべて任せてもよいですか?
生活面の支援は委託できますが、運行管理や安全教育など、運送業務に直結する部分は、企業自身が責任を持って行う必要があります。委託先と、役割の範囲を明確にしておきましょう。
Q. 最初は何人から受け入れるのがよいですか?
最初は少人数で受け入れ、体制を試しながら広げるのが一般的です。1人目の経験で見えた課題を、2人目以降に活かせます。
Q. 体制づくりの相談は、どこにすればよいですか?
運送業の要件や認証については、国土交通省の窓口や、トラック協会などの業界団体が参考になります。在留資格や協議会の手続きは行政書士、支援の委託は登録支援機関、採用は人材紹介会社と、内容に応じて相談先を使い分けるとスムーズです。
Q. 日本人ドライバーの理解を得るには、どうすればよいですか?
受け入れの目的(人手不足の解消、安全な運行の継続など)と、教育・同乗指導の分担を、事前に丁寧に説明しましょう。指導を担う社員の負担や、評価の方法についても、あらかじめ話し合っておくと、現場の納得感が高まります。
まとめ
– 外国人ドライバーの受入れ体制が未整備の企業は73.6%。何から始めるかを整理することが第一歩
– 事業許可、認証、協議会加入、日本人同等以上の報酬、改善基準告示などの要件を確認する
– 運転者には、日本の免許(在留資格の申請前に取得)、日本語、評価試験が求められる
– 7つのステップ(要件→協議会→支援→運転者要件→教育→生活→社内合意)で進める
– 最初は少人数で、外部の専門家と連携しながら体制を整える
参考
– 行政書士法人Tree「特定技能『自動車運送業』の要件と手続き」https://office-tree.jp/blog/immigration/tokutei-ginou-auto-transport-business/
– マイナビグローバル「特定技能『自動車運送業』について」https://global-saponet.mgl.mynavi.jp/visa/21848
– 国土交通省「自動車運送業分野における特定技能制度」https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/002010652.pdf
– 出入国在留管理庁「特定技能制度」https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/tokutei_index.html