離職

【この記事の要点】

– 退職が決まったら、まず「帰国するのか、日本で転職するのか」を確認します。手続きが大きく変わるためです

– 会社は、社会保険・雇用保険の資格喪失、外国人雇用状況の届出、源泉徴収票の交付などを行います

– 住民税は、1月1日時点で日本に住所があれば、出国後も課税されます。出国前の精算か、納税管理人の届出が必要です

– 脱退一時金は、出国後2年以内に請求します。再入国許可を持ったまま出国すると請求できません

– 退職時の丁寧な案内は、退職者の満足度と、次の採用の評判にもつながります

外国人社員が退職や帰国をするとき、日本人の退職にはない手続きが数多く発生します。「在留資格はどうなるのか」「住民税はどうするのか」「年金は戻ってくるのか」といった質問に、会社が答えられないと、本人が不安を抱えたまま帰国してしまいます。本記事では、退職・帰国の場面で、会社と本人がそれぞれ行う手続きを、時系列で整理します。

まず確認:退職後の予定は「帰国」か「国内で転職」か

退職の意思を聞いたら、最初に退職後の予定を確認しましょう。

帰国する:出国前の手続き(住民税、年金、住民登録など)が中心になります

日本国内で転職する:新しい勤務先での在留資格の適合性や、届出が中心になります

日本に残るが就職先は未定:在留資格に基づく活動をしていない期間が長くなると、在留資格の取消しの対象になるおそれがあります

予定によって必要な手続きが変わるため、退職日の2〜3か月前を目安に、早めに話し合うと安心です。

会社が行う主な手続き

| 手続き | 内容 |

| 健康保険・厚生年金の資格喪失届 | 退職日の翌日から原則5日以内に届出 |

| 雇用保険の資格喪失届・離職票 | 資格喪失届は原則として離職の翌々日から10日以内。本人の希望に応じて離職票を発行 |

| 外国人雇用状況の届出 | 雇用保険の被保険者かどうかで、手続きと期限が異なる。ハローワークの案内で確認 |

| 源泉徴収票の交付 | 退職後1か月以内に交付。永住申請や確定申告で必要になる |

| 住民税の手続き | 特別徴収の異動届、または退職時の一括徴収(後述) |

| 最終給与・精算 | 有給休暇、最終月の給与、社宅の退去などを確認 |

期限は、手続きの内容や地域によって異なる場合があります。提出先の案内で、最新の情報を確認してください。

在留資格に関する届出と注意点

本人が行う届出

就労系の在留資格を持つ中長期在留者が、勤務先との契約を終了したときは、契約の終了から14日以内に、出入国在留管理庁へ届出をする必要があります。本人が日本語の手続きに不慣れな場合は、会社が届出の存在を伝え、書き方を案内すると安心です。

特定技能・技能実習(育成就労)の受入れ機関の届出

特定技能の受入れ機関は、雇用契約が終了した場合などに、随時の届出を行う義務があります。技能実習・育成就労では、監理団体(監理支援機関)への連絡も必要です。これらの届出を怠ると、受入れ機関としての信頼を失い、今後の受け入れに影響するおそれがあります。

在留資格に基づく活動を行わない期間に注意

就労系の在留資格を持つ人が、正当な理由なく3か月以上、その在留資格に基づく活動を行わずに在留していると、在留資格の取消しの対象になる可能性があります。退職後に国内で転職活動をする社員には、この点を伝えておくと親切です。

国内で転職する場合

転職先での仕事が、現在の在留資格で認められる活動の範囲に収まっているかを、確認する必要があります。内容によっては、在留資格の変更が必要になります。判断が難しい場合は、行政書士に相談することをおすすめします。

帰国する場合に必要な手続き

住民税の精算または納税管理人

住民税は、毎年1月1日時点で日本に住所がある人に課税されます。そのため、退職や帰国の時期によっては、出国したあとにも納税が必要になります。

1月〜5月に退職:未納分の残額を、最後の給与や退職手当から一括して徴収する必要があります(本人の申出は不要)

6月〜12月に退職:本人が希望した場合は、最後の給与や退職手当から一括して徴収できます。希望しない場合は、本人が自分で納める方法に切り替わります

一括して納められない場合は、日本国内にいる人を「納税管理人」として定め、出国前に市区町村へ届け出る必要があります。住民税が未納のまま出国すると、再来日や在留資格の更新の際に、不利な扱いを受ける場合があります。詳しい取扱いは、お住まいの市区町村や、総務省の案内で確認してください。

所得税の確定申告

年の途中で出国する場合は、出国の時点で年末調整を行う取扱いがあります。出国後に確定申告が必要になる場合は、納税管理人の届出が必要です(詳しくは「外国人社員の年末調整」の記事を参照)。

住民登録の転出(海外転出届)

日本を出国して、そのまま長期にわたって海外で暮らす場合は、出国前に市区町村へ「海外転出届」を提出します。この手続きによって、国民健康保険や国民年金の資格も整理されます。出国後に住民登録が残ったままだと、保険料や税金の請求が続くことがあるため、忘れずに行うよう案内しましょう。

国民健康保険・国民年金

会社の社会保険を抜けたあと、日本にとどまる場合は、国民健康保険や国民年金に切り替える必要があります。帰国する場合は、海外転出届によって、これらの手続きを整理します。保険料の滞納が将来の在留資格に影響する方針が示されているため、退職時の手続きの漏れには注意が必要です(「外国人の健康保険料の滞納が在留審査に影響」の記事を参照)。

脱退一時金の請求

日本の年金の加入期間が短く、年金を受け取れないまま帰国する外国人は、支払った保険料の一部を「脱退一時金」として受け取れる場合があります。主なポイントは次のとおりです。

– 出国後2年以内に請求する必要がある

– 2026年4月から、計算の対象となる期間の上限が5年から8年に引き上げられた

– 再入国許可(みなし再入国許可を含む)を持ったまま出国する場合は、原則として請求できない

制度の詳細は、「外国人労働者の脱退一時金、上限が8年に」の記事で解説しています。

### その他の生活面の手続き

銀行口座の解約や母国への送金方法、携帯電話・インターネット・電気・ガス・水道の解約、賃貸住宅の退去と敷金の精算なども、帰国前に済ませておく必要があります。入社時に手伝った生活の立ち上げと同じように、退去時にも案内があると、本人の負担が大きく減ります。

会社の退職時チェックリスト

– 退職後の予定(帰国・国内転職)を、早めに確認した

– 社会保険・雇用保険の資格喪失の届出を、期限内に行った

– 外国人雇用状況の届出(雇用保険の資格喪失届を含む)を、行った

– 特定技能・技能実習(育成就労)の受入れ機関としての届出を、確認した

– 源泉徴収票を、期限内に交付した

– 住民税の一括徴収または納税管理人の手続きを、案内した

– 脱退一時金の請求方法と期限を、案内した

– 海外転出届、国保・国民年金の手続きを、案内した

– 本人に、在留資格の届出(契約終了から14日以内)を、案内した

## 退職時の対応は「採用ブランド」になる

退職者は、同じ国の友人やコミュニティに、勤務先の評判を伝えます。手続きを丁寧に案内し、感謝の気持ちを伝えて送り出すことで、「良い会社だった」という口コミにつながります。逆に、手続きの漏れや、冷たい対応は、次の採用活動に悪影響を及ぼすおそれがあります。退職時の案内は、費用のかからない、採用ブランドづくりの機会でもあります。

よくある質問

Q. 突然帰国してしまい、連絡が取れなくなった場合はどうすればよいですか?

まず、連絡を試みた記録を残したうえで、特定技能の受入れ機関や、技能実習・育成就労の実施者は、所定の届出を速やかに行う必要があります。放置せず、監理団体、登録支援機関、行政書士に相談してください。

Q. 退職後の住民税の通知書は、どこに届きますか?

納税管理人を定めている場合は、管理人の住所に届くのが一般的です。住所の変更や、管理人の連絡先を、市区町村に届け出ておくことが大切です。

Q. 有給休暇が残っている場合は、どうなりますか?

有給休暇の取扱いは、日本人社員と同様です。退職日までに取得できるよう調整するのが一般的で、帰国のスケジュールにも影響するため、早めに本人と相談しましょう。

まとめ

– 退職が決まったら、帰国か国内転職かを確認し、予定に応じた手続きを案内する

– 会社は、社会保険・雇用保険の資格喪失、外国人雇用状況の届出、源泉徴収票の交付などを行う

– 本人には、契約終了から14日以内の入管への届出などを案内する

– 住民税は、出国後も課税されるため、一括徴収または納税管理人の手続きが必要

– 脱退一時金は、出国後2年以内に請求する。再入国許可を持って出国した場合は請求できない

参考

– 総務省「外国人の方の個人住民税について」https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/individual-inhabitant-tax.html

– 総務省「外国人の個人住民税に関する資料」https://www.soumu.go.jp/main_content/000632652.pdf

– 厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/todokede/index.html

– 日本年金機構「脱退一時金」https://www.nenkin.go.jp/international/japanese-system/lumpsumwithdrawalpayments/index.html