ホテルや病院で使われるシーツ・タオル・ユニフォームなどのリネン類を洗濯・仕上げ・配送する「リネンサプライ」業。この分野が2026年1月、特定技能・育成就労の対象分野として新たに加わりました。インバウンド需要の回復や医療機関の稼働率上昇にともない、リネン供給を支える現場の人手不足が表面化するなか、宿泊・医療業界に関わる企業にとって見逃せない制度改正です。本記事では、リネンサプライ分野の概要と採用にあたって押さえておくべきポイントを解説します。
リネンサプライ分野が新設された背景
インバウンド回復とホテル稼働率の上昇
観光需要の回復にともない、ホテル・旅館の客室稼働率が上昇し、客室数に比例してリネン類の洗濯・交換の需要も増加しています。24時間体制で稼働するリネン工場では、慢性的な人手不足が課題となっていました。
医療・介護施設からの需要増
病院や介護施設で使用されるシーツ・ガウン・タオル類も、衛生管理の観点から高頻度での交換・洗濯が求められます。医療機関の稼働状況によって需要が左右されやすく、安定した人員確保が事業継続の鍵を握っています。
特定技能「リネンサプライ」分野の概要
対象事業所と業務内容
対象となるのは、ホテル・病院等向けにシーツ・タオル・ユニフォームなどのリネン類の洗濯・仕上げ・配送を行う事業所です。工場内での選別・洗濯・乾燥・アイロン仕上げ・検品・梱包・配送準備といった一連の工程が業務範囲に含まれると想定されています。
受入れ見込み数
リネンサプライ分野の受入れ見込み数は、育成就労3,400人・特定技能4,300人の合計7,700人とされています。他の新設分野と比べても一定規模の受け入れが見込まれており、業界にとって実効性のある制度になると期待されています。
### 転籍制限期間は1年
転籍制限期間は1年
育成就労制度のもとでは、リネンサプライ分野の転籍制限期間は1年とされています。他分野より短い設定となっており、労働者の意向を尊重しつつ、事業者側にも一定の定着期間を確保する形でバランスが取られています。
採用を検討する企業が押さえるべき実務ポイント
交代制勤務への対応
リネン工場は稼働時間が長く、早朝・夜間のシフトが発生することも珍しくありません。採用時点で勤務形態を明確に説明し、通勤手段や生活リズムへの配慮を行うことが定着につながります。
洗剤・薬剤の安全教育
工業用洗剤や消毒薬品を扱う工程があるため、取り扱い方法や保護具の使用について多言語での安全教育が欠かせません。特に医療機関向けリネンでは感染対策の知識も求められるため、研修内容を充実させる必要があります。
登録支援機関との連携
特定技能1号での受け入れでは、生活支援・日本語学習支援などを行う登録支援機関への委託が必要です。リネン工場は郊外に立地することも多いため、住居確保や通勤サポートに強い支援機関を選ぶと安心です。
ホテル・病院側が直接雇用する場合との違い
リネンサプライ業務は、ホテルや病院が自社内でリネン管理を行う場合と、外部のリネンサプライ専門業者に委託する場合の2つのパターンがあります。特定技能「リネンサプライ」分野の対象となるのは、洗濯・仕上げ・配送を専門に担う事業所であることが基本です。自社のホテル内で客室清掃と兼任でリネン交換を行うようなケースは、別の在留資格・分野で検討する必要がある場合もあるため、該当性については行政書士等の専門家に確認することをおすすめします。
今後の見通し
リネンサプライは物流倉庫・資源循環とあわせて2026年1月に新設が決定した3分野のひとつです。特定技能は19分野体制に拡大し、宿泊・医療という生活に密着した業界での外国人材活用が一段と進むと見られています。試験制度や具体的な運用の詳細は今後順次公表される見込みのため、業界団体や出入国在留管理庁の発表を継続的に確認することが重要です。
リネンサプライ事業者が今のうちに取り組むべき人材育成
育成就労からのキャリアパスを描く
リネンサプライは育成就労・特定技能の双方で対象となる分野です。育成就労で入社した人材が3年をかけて技能を習得し、特定技能へ移行して即戦力として長く働き続けられるよう、社内でキャリアパスを設計しておくことが重要です。工程ごとの習熟度を可視化する仕組みを整えると、本人のモチベーション維持にもつながります。
検品・仕上げ工程の技能標準化
リネンサプライの品質はホテルや病院からの信頼に直結します。検品基準やアイロン仕上げの手順を標準化し、多言語のマニュアルや動画で共有しておくことで、経験の浅い人材でも早期に一定の品質を保てるようになります。
資格外活動許可を持つ留学生アルバイトとの違いに注意
リネン工場では、特定技能人材とは別に、週28時間まで就労可能な留学生アルバイトを活用しているケースもあります。両者は在留資格上の位置づけがまったく異なるため、シフト管理や労務管理を混同しないよう、人事担当者の間で運用ルールを明確にしておく必要があります。
よくある質問
Q. ホテル内で客室清掃と兼務でリネン交換を行う場合も対象になりますか?
特定技能「リネンサプライ」分野は、洗濯・仕上げ・配送を専門に担う事業所を主な対象として想定されています。客室清掃業務との兼務で行う場合は該当性の判断が分かれる可能性があるため、行政書士等の専門家に個別に確認することをおすすめします。
Q. 病院向けと宿泊施設向けで求められる知識に違いはありますか?
病院向けリネンでは感染対策の知識がより重視される傾向にあります。研修内容を委託先の業態に応じてカスタマイズし、衛生管理の基準を明確に伝えることが品質維持につながります。
まとめ
– 2026年1月、特定技能・育成就労の新設分野として「リネンサプライ」が追加された
– 対象はホテル・病院向けのシーツ・タオル等の洗濯・仕上げ・配送を行う事業所
– 受入れ見込み数は育成就労3,400人+特定技能4,300人の計7,700人
– 育成就労での転籍制限期間は1年と他分野より短い設定
– 交代制勤務・薬剤の安全教育など現場特有の受け入れ準備が必要
参考
– 出入国在留管理庁「特定技能制度及び育成就労制度の受入れ対象分野(新たに追加等を行う分野等)の詳細(案)」https://www.moj.go.jp/isa/content/001440967.pdf
– 外国人材新聞「特定技能新3分野の先行者利益|物流倉庫・資源循環・リネン」https://www.gaikokujin-press.com/archives/2964
– 出入国在留管理庁「特定技能制度」https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/tokutei_index.html
– 厚生労働省「外国人雇用に関する法律」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/index.html