雇用

外国人材を採用する企業の担当者にとって、意外と見落とされがちなのが「住民登録」と「マイナンバー」の手続きです。この2つが完了していないと、給与振込口座の開設、社会保険の加入、年末調整など、その後の実務の多くが滞ってしまいます。本記事では、外国人の住民登録・マイナンバー手続きの流れと、企業が入社前に案内すべきポイントを解説します。

住民登録の対象となる外国人

日本に中長期間在留する外国人(在留期間が3か月を超える在留資格を持つ人)は、住民基本台帳制度の対象となり、日本人と同様に住民登録を行う必要があります。留学・技能実習・特定技能・技術人文知識国際業務・高度専門職など、多くの就労系・留学系の在留資格がこれに該当します。

住民登録の手続きの流れ

転入届(住居地届出)の提出

来日後、市区町村の窓口で住所を届け出る「住民異動届」を提出します。海外から新規に来日した場合は、在留カードを持参して手続きを行います。届出は、住居地を定めた日から14日以内に行う必要があります。

在留カードへの住居地記載

住民登録の手続きが完了すると、在留カードの裏面に住居地が記載されます。この記載がない、または実際の住所と異なる状態が続くと、在留カードの有効性そのものに影響する場合があるため、引っ越しをした際も速やかに変更の届出が必要です。

マイナンバーの通知方法

個人番号通知書の郵送

住民登録が完了すると、市区町村から本人宛にマイナンバー(個人番号)が記載された「個人番号通知書」が郵送されます。2020年以降、紙製の「通知カード」は廃止されており、現在はこの通知書によってマイナンバーが本人に伝えられる仕組みになっています。

マイナンバーカードの申請は任意

個人番号通知書とは別に、写真付きの身分証明書として利用できる「マイナンバーカード」を取得するかどうかは任意です。ただし、マイナンバーカードがあると、コンビニでの住民票取得や、各種行政手続きのオンライン申請などで利便性が高まります。2026年6月からは、在留カードと一体化した「特定在留カード」の運用も始まっており、外国人材にとって選択肢が広がっています。

企業が案内すべき実務ポイント

入社前のスケジュールに組み込む

住民登録・マイナンバーの通知には一定の日数がかかります。銀行口座の開設や給与関連の手続きがこれに連動するため、入社日から逆算して、住民登録をいつまでに完了させる必要があるかを本人と共有しておくことが重要です。

住所変更時の届出忘れに注意を促す

社宅から一般の賃貸物件へ引っ越す、あるいは転勤で住所が変わるといった場面では、住民登録の変更届出とあわせて、在留カードの住居地記載の更新も必要です。届出を怠ると、罰則の対象となる場合もあるため、社内の生活サポート担当者から早めに案内しておくとよいでしょう。

マイナンバーの利用目的を明示して収集する

企業がマイナンバーを取得する際は、社会保険・税務手続きなど、利用目的をあらかじめ明示したうえで収集する必要があります。マイナンバーは特定個人情報として、通常の個人情報以上に厳格な安全管理措置が求められるため、取り扱いのルールを人事・総務担当者間で明確にしておきましょう。

多言語での案内資料を用意する

住民登録・マイナンバーの制度は、外国人材にとって母国にない仕組みであることも多く、説明を受けても理解が難しい場合があります。市区町村が提供する多言語版のパンフレットを活用したり、自社で「やさしい日本語」の案内資料を作成したりすることで、本人の不安を軽減できます。

住民登録が遅れることで生じる実務上の支障

住民登録が完了していないと、銀行口座の開設ができないだけでなく、国民健康保険・国民年金への加入手続き、携帯電話の契約、賃貸契約の一部手続きなど、生活基盤に関わる多くの場面で支障が生じます。特に来日直後の外国人材にとっては、最初の数週間でこれらの手続きをどれだけスムーズに進められるかが、その後の生活の安定度、ひいては職場への定着にも影響してきます。

よくある質問

Q. 短期滞在の在留資格でも住民登録は必要ですか?

在留期間が3か月以下の在留資格(短期滞在など)は住民基本台帳制度の対象外です。中長期在留者に該当する在留資格を持つ人材が対象になる点を押さえておきましょう。

Q. 住民登録前でも社会保険の手続きはできますか?

社会保険の加入手続きにはマイナンバーの提出が求められる場面が多く、住民登録が完了していないと手続きが滞る可能性があります。入社日までに住民登録を終えておくことが望ましいです。

Q. 家族を呼び寄せた場合も同じ手続きが必要ですか?

配偶者や子どもを扶養家族として呼び寄せる場合も、来日後に本人と同様の住民登録・マイナンバーの通知手続きが必要です。家族分の手続きも見越して、余裕を持ったスケジュールを組んでおきましょう。

入社時オリエンテーションへの組み込み

住民登録・マイナンバーの手続きは、外国人材本人にとって一度きりの分かりにくい経験になりがちです。入社時オリエンテーションの中に、これらの手続きの目的・流れ・注意点を説明する時間を組み込んでおくことで、本人の不安を軽減しつつ、企業側も後追いの問い合わせ対応に追われずに済みます。

特定在留カードとの関係

2026年6月から運用が始まった「特定在留カード」は、在留カードとマイナンバーカードが一体化したカードです。希望者は、住民登録の完了後に発行されるマイナンバーを踏まえて、この一体型カードへの切り替えを申請することもできます。通常の在留カードよりも発行に時間がかかる点を踏まえ、住民登録・マイナンバー通知・特定在留カードへの切り替えという一連の流れ全体を見越したスケジュール管理を行うと、手続きの抜け漏れを防げます。

まとめ

– 在留期間3か月超の外国人は住民基本台帳制度の対象となり、住民登録が必要

– 転入届は住居地を定めた日から14日以内に、在留カードを持参して市区町村窓口で手続きする

– マイナンバーは「個人番号通知書」の郵送で通知され、マイナンバーカードの取得は任意

– 住所変更時は住民登録の変更届出と在留カードの住居地記載の更新をあわせて行う必要がある

– 企業は入社前のスケジュールに住民登録の完了時期を組み込み、多言語での案内を用意することが望ましい

参考

– 出入国在留管理庁「在留カード等に関する情報」https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/index.html

– デジタル庁「マイナンバー制度」https://www.digital.go.jp/policies/mynumber

– 総務省「住民基本台帳制度」https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/daityo/index.html

– 厚生労働省「外国人雇用に関する法律」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/index.html