近年、外国人材の受入れ政策において大きな転換期を迎えています。本記事では、弁護士法人Global HR Strategy代表の杉田昌平弁護士によるウェビナー資料「技人国のキワを極めるウェビナー2026」をもとに、在留資格「技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)」の厳格化の背景と、企業が押さえておくべき実務上のポイントを解説します。
1. 外国人政策の大きな転換(2026年の変化)
2026年は、日本の外国人政策において「適正化」と「厳格化」へと舵が切られた重要な年となりました。
- 「積極的」から「真に求める」人材へ 2026年7月に策定された「第2次出入国在留管理基本計画」では、第1次計画にあった「専門的・技術的分野の外国人については、積極的に受け入れていく」という文言から、「積極的」が削られました。代わりに「我が国が真に求める専門的・技術的分野の外国人材の受入れを進めていく」と明記されており、これは実態の伴わないいわゆる「なんちゃって技人国」の排除を念頭に置いたものと推測されます。
- 「人手不足=外国人材」という前提の崩壊 2026年の「骨太の方針」では、前年まで記載されていた「人手不足対策としての外国人材の活用」に関する記述が原則として削除されました。人手不足の解決手段は「共生社会(外国人の受入れ)」から「AI・フィジカルAI」へと置き換わっています。
- 「秩序ある共生」の推進 政府は不法滞在者ゼロプランなどを推進しており、電子渡航認証制度(JESTA)の前倒し導入(2028年度中)や、審査の厳格化など、出入国在留管理の一層の適正化を図っています。
2. 「技人国」ビザの実務とNG事例
政策の厳格化に伴い、技人国ビザの審査・運用も厳しくなっています。技人国は、大学等で学んだ技術・知識と実際の業務に関連性があること、または国際業務(外国の文化に基盤を有する思考や感受性を必要とする業務)であることが必須です。
【不許可(NG)となる業務の代表例】 求人で「未経験可、すぐに慣れます」と記載されるような業務や、以下のような単純作業は技人国では認められません。
- 弁当工場での箱詰め作業
- バイクのフレーム修理やパンクしたタイヤの付け替え
- パソコン等のデータ保存、バックアップ作成、ハードウェアの部品交換
- 宿泊業における、フロントでの単なる接客、レストランでの配膳や片付けのみの業務
現場での作業を主な業務とする場合は、「特定技能」など他の適切な在留資格を検討する必要があります。
3. 例外的に現場作業が認められる「OJT型技人国」の注意点
技人国ビザであっても、例外として「OJT(実務研修)」や「急な対応」の場合に限り、本来の業務以外の現場作業を行うことが認められるケースがあります。しかし、これには厳しい条件があります。
- 日本人大卒社員と同等であること 外国人社員だけに設定された研修や、日本人社員と差がある研修は、合理的な理由がない限り認められません。
- 在留期間の原則は「1年」 OJT期間が設けられている場合、研修後に本来の技人国業務へ移行しているかを確認するため、初回の在留期間は原則「1年」となります。合理的な理由なく予定を超えて研修を続けると更新が不許可になります。
- キャリアアップ計画書の提出 採用から1年を超えて実務研修を行う場合は、研修計画(キャリアステップ)の提出が求められ、その合理性が厳しく審査されます。
- 「選抜型」はNG 数年間の店舗での接客・調理等の実務経験を経て、そこから「適性のある者を選抜して」技人国の業務に就かせるようなキャリアプランは不許可となります。全員がOJT後に技人国業務を行う前提の採用でなければなりません。
4. 今後の外国人雇用の将来予想
これまで、外国人材の受入れは「市場(ニーズ)」が主導してきましたが、今後は「政治(規制)」の力が強く影響するようになります。
- 更新上限のないビザの厳格化 「技人国」「経営・管理」「永住」「特定技能2号」など、在留期間の更新上限がない在留資格に対しては、規制や審査の厳格化が進むと予想されます。
- 「ブリッジ」としての受入れ拡大 一方で、在留期間に上限がある「育成就労」や「特定技能1号」などは、フィジカルAIが普及するまでの「ブリッジ(橋渡し)」として受入れが拡大していくと見られています。
まとめ 外国人雇用は今後も必要とされるものの、企業側にはより一層「ルール(規制)に適合した受入れ」が求められます。在留資格の要件を正しく理解し、適正な労務管理・キャリア構築を行うことが、今後のグローバルHR戦略の鍵となるでしょう。