雇用

厚生労働省は2026年5月15日、労働政策審議会の分科会において、外国人雇用に関する事業主向け指針の見直し案を提示しました。改正内容は2026年6月以降、順次適用される見込みです。外国人を1人でも雇用している、またはこれから雇用を検討している企業にとって、指針の変更点を把握しておくことは欠かせません。本記事では、改正の背景と企業が対応すべきポイントを整理します。

「外国人雇用管理指針」とは

外国人雇用管理指針は、雇用対策法(労働施策総合推進法)にもとづき厚生労働大臣が定める指針で、外国人労働者の雇用・労働条件・安全衛生などについて、事業主が講ずべき措置を示したものです。法律そのものではありませんが、指針に沿った対応が行われているかどうかは、労働基準監督署やハローワークの指導における重要な判断基準となります。

今回の見直しの背景

近年、外国人労働者数が257万人を超え過去最多を更新する一方で、不適切な雇用管理や不法就労にまつわるトラブルも増加傾向にあります。厚生労働省は、事業主が「知らなかった」では済まされない範囲を明確化し、適切な雇用管理を事業主の明確な責務として位置付ける方向で指針の見直しを進めています。

改正で明確化される主なポイント

届出義務の徹底

外国人労働者を雇用・離職させた際にハローワークへ届け出る「外国人雇用状況の届出」について、より確実な履行を求める内容が盛り込まれる見込みです。届出を怠った場合は30万円以下の罰金という既存の罰則規定とあわせて、実務上の徹底が改めて強調されています。

在留資格・在留カードの確認体制

採用時における在留カードの確認、就労可能な在留資格であることの確認について、事業主が講じるべき具体的な管理体制がより明確に示される方向です。これまで「確認すること」という抽象的な記載にとどまっていた部分が、より実務に即した形に整理されると見られています。

適切な雇用管理の責務化

賃金・労働時間などの労働条件について、外国人であることを理由に不利益な取り扱いをしないこと、社会保険への適正な加入など、日本人労働者と同様の管理を行うことが事業主の責務として位置付けられます。

企業が今すぐ確認すべきこと

現状の届出フローの棚卸し

雇用・離職のたびにハローワークへの届出が確実に行われているか、社内フローを確認しましょう。担当者の異動や休職などで抜け漏れが発生していないか、この機会にチェックすることをおすすめします。

在留カード確認・保管ルールの明文化

「誰が」「いつ」「どのように」在留カードを確認し、コピーを保管するのかを社内規程として明文化しておくと、指針改正後の監督対応にも慌てず対応できます。出入国在留管理庁の「在留カード等番号失効情報照会」サービスを使った真偽確認を、標準フローに組み込むことも有効です。

労働条件の説明資料の多言語対応

指針の見直しにより、外国人労働者本人が労働条件を正しく理解できる状態にあるかどうかも、これまで以上に重視されると考えられます。雇用契約書や就業規則の多言語化・やさしい日本語化を進めておくと安心です。

技能実習・特定技能・育成就労いずれの雇用形態にも共通する対応

今回の指針見直しは特定の在留資格に限定した措置ではなく、外国人を雇用するすべての事業主が対象です。技能実習生を受け入れている企業、特定技能人材を雇用している企業、今後育成就労を活用する予定の企業のいずれであっても、届出義務・在留資格確認・適正な労働条件確保という3つの基本を満たしているかを、この機会に横断的に点検しておくことをおすすめします。特に複数の在留資格の外国人が混在する職場では、資格ごとに管理ルールが異なるため、人事担当者向けの社内マニュアルを整理しておくと実務上の抜け漏れを防げます。

中小企業ほど早めの対応が求められる理由

大企業には人事・法務の専門部署があり、法改正への対応も比較的スムーズに進みます。一方、外国人材の採用を始めたばかりの中小企業では、雇用管理の担当者が他の業務と兼任していることが多く、指針改正のような制度変更の情報が現場まで届きにくい傾向があります。顧問の社会保険労務士や行政書士がいる場合は、指針改正の内容と自社への影響について早めに相談し、届出フローの点検を依頼しておくと安心です。

よくある質問

Q. すでに外国人を雇用している場合、指針改正にあわせて何か届出が必要ですか?

指針改正自体によって新たな届出義務が即座に発生するわけではありませんが、既存の届出義務(雇入れ・離職時のハローワークへの届出)が確実に履行されているかを再確認する良い機会です。

Q. 指針の内容はどこで確認できますか?

厚生労働省の公式サイトで、外国人雇用管理指針の全文や改正内容の解説資料が公開されています。改正後の内容が適用される前に、一度目を通しておくことをおすすめします。

対応を怠った場合のリスク

指針自体に直接の罰則はありませんが、指針が示す水準を満たさない雇用管理は、届出義務違反(30万円以下の罰金)や不法就労助長罪(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)といった既存の法令違反の発覚につながりやすくなります。また、労働基準監督署による是正勧告や指導の対象となれば、企業名の公表など社会的信用に関わるリスクも生じます。

まとめ

– 厚生労働省は2026年5月に外国人雇用管理指針の見直し案を提示し、6月以降順次適用される

– 背景には外国人労働者数257万人超という受け入れ拡大がある

– 届出義務の徹底、在留資格の確認体制、適正な労働条件の確保が事業主の責務として明確化される

– 企業は届出フローの棚卸し、在留カード確認ルールの明文化、契約書類の多言語化を早めに進めるべき

– 指針違反は既存の罰則規定の発覚リスクや社会的信用の低下につながる

参考

– 東京新聞「外国人雇用巡る指針見直し 届け出徹底、適切管理を」https://www.tokyo-np.co.jp/article/488361

– ニセコビザ申請サポートセンター「2026年最新 厚労省が外国人雇用の指針を見直しへ」https://nisekovisa.com/2026%E5%B9%B4%E6%9C%80%E6%96%B0-%E5%8E%9A%E5%8A%B4%E7%9C%81%E3%81%8C%E5%A4%96%E5%9B%BD%E4%BA%BA%E9%9B%87%E7%94%A8%E3%81%AE%E6%8C%87%E9%87%9D%E3%82%92%E8%A6%8B%E7%9B%B4%E3%81%97%E3%81%B8-%E4%BC%81/

– 厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/todokede/index.html

– 出入国在留管理庁「在留カード等番号失効情報照会」https://lapse-immi.moj.go.jp/