雇用

【この記事の要点】

– 厚生労働省は、国民健康保険料を長期間滞納した外国人について、原則として在留資格の更新・変更を認めない仕組みを、2027年6月から運用する方針を示しました

– 納付データを入管の審査システムと連携させ、医療費の不払いの情報も共有する体制を整えるとされています

– 会社員なら社会保険は会社が手続きしますが、加入漏れ、退職後の切替忘れ、国保の脱退手続きの漏れから、意図せず未納になる例があります

– 2026年10月の社会保険の適用拡大で、切替が必要な社員が増える可能性があります

– 企業は、入社時・退職時の案内と、社会保険の適正な加入を見直しておきましょう

「保険料を払っていない」ことが、これまで以上に在留資格の更新に響く時代が近づいています。外国人材を雇用する企業にとっても、他人事ではありません。本記事では、報道されている厚生労働省の方針と、企業が確認しておきたい実務ポイントを整理します。

厚生労働省が示した方針の内容

長期滞納者は、在留資格の更新・変更を原則認めない

報道によると、厚生労働省は、外国人による国民健康保険料の未納や医療費の不払いが増えている状況を受け、出入国在留管理庁と連携した制度改正を進めています。国民健康保険料を長期間滞納した外国人については、原則として在留資格の更新や変更を認めない仕組みを、2027年6月から運用する方針とされています。

納付データを入管の審査と連携

国保の納付データを、入管の審査システムと連携させ、滞納の履歴が自動的に反映される形にすると報じられています。2026年度中に全国の自治体のシステムを改修し、翌年度から本格的に運用する予定です。

医療費の不払いの情報も共有

医療費の不払いについても、医療機関からの情報を入管と共有する体制を整え、短期滞在者だけでなく、中長期の在留者にも対象を広げるとされています。

背景にある納付率の低さ

報道では、外国人住民の健康保険料の納付率が、平均で約6割にとどまっているとも伝えられています。制度改正は、外国人と日本人が互いに尊重し合う社会をめざす、政府の外国人共生の基本方針の一環として進められています。

詳細な運用は今後の公表を確認

何か月以上の滞納を「長期」とするのか、やむを得ない事情がある場合の扱いはどうなるのかなど、具体的な運用は、今後の公表を待つ必要があります。企業としては、最新の情報を継続的に確認することが重要です。

永住許可の動きともつながっている

2027年4月1日には、故意に公租公課(税金や社会保険料など)を支払わない永住者の在留資格を取り消せる制度が始まる予定です。また、2026年10月に改定された永住許可のガイドラインでも、公的な義務の履行が重視されています。在留資格の更新、変更、永住のいずれの場面でも、保険料や税金を適正に納めているかが、これまで以上に問われる流れです。

会社員でも「未納」になってしまう落とし穴

会社で社会保険(健康保険・厚生年金)に加入している社員は、保険料が給与から天引きされるため、通常は滞納の心配は少ないはずです。しかし、次のような場面で、意図せず未納の状態になることがあります。

落とし穴1:会社が社会保険に加入させていない

本来、社会保険に加入すべき社員を、会社が加入させていない場合、本人は国民健康保険・国民年金に入るしかありません。自分で手続きや納付をする必要があり、日本語の案内が理解できずに、未納になるおそれがあります。企業にとっても、法令違反のリスクがあるため、加入漏れがないか確認が必要です。

落とし穴2:社会保険に入ったのに、国保の脱退をしていない

パートやアルバイトから社会保険に加入するようになったとき、それまで入っていた国民健康保険を抜ける手続き(資格喪失の届出)を忘れると、国保の保険料の請求が続きます。気づかないまま納付書を放置すると、滞納とみなされる可能性があります。国保の届出は、原則として事実が生じた日から14日以内に行う必要があります。

落とし穴3:退職後の切替を忘れる

退職すると、社会保険の資格を失います。その後、国民健康保険や国民年金に切り替える手続き、または健康保険の任意継続の手続きを、定められた期間内に行う必要があります。任意継続は、退職の翌日から20日以内の申請が必要とされています。日本語に不慣れな社員は、手続きの存在を知らないまま、保険がない状態や、未納の状態になることがあります。

落とし穴4:扶養に入れない家族の保険

家族を日本に呼び寄せた場合、家族が社員の健康保険の扶養に入れないときは、家族が国民健康保険に加入します。家族の分の保険料も、納付が必要です。

2026年10月の社会保険の適用拡大との関係

2026年10月から、社会保険の加入対象の賃金要件が撤廃され、週20時間以上働く社員は、賃金額にかかわらず加入対象になります(「社会保険『106万円の壁』撤廃」の記事を参照)。これまで国保・国民年金に入っていた短時間労働の外国人社員が、社会保険に切り替わるケースが増える可能性があります。その際に、国保の脱退手続きの漏れが起きないよう、会社からも声をかけることが大切です。

企業が実施したい対応

入社時の案内

入社時に、加入する保険の種類(健康保険・厚生年金・雇用保険)と、給与からの天引きの意味を、やさしい日本語や母語で説明します。それまで国保に入っていた社員には、脱退の手続きが必要なことを伝えましょう。

退職時の案内

退職時に、次の内容を書面にまとめて渡すと、手続きの漏れを防げます。

– 健康保険証の返却

– 国民健康保険への加入、または任意継続の手続きと期限

– 国民年金への切替

– 住民税の納付方法の変更

– 源泉徴収票の受け取り

社会保険の加入状況の定期的な点検

加入すべき社員が漏れなく加入しているか、短時間労働者の労働時間の管理が適切かなどを、定期的に点検しましょう。特に、2026年10月の改正後は、対象者の見直しが必要です。

保険料の意味を伝える

保険料を、単なる負担としてではなく、病気やケガをしたときに医療費の負担を抑えられる仕組みであることを、具体的に伝えることも大切です。日本の医療保険の基本(窓口の自己負担割合など)を、説明資料にまとめておくと役立ちます。

チェックリスト

– 社会保険に加入すべき社員が、漏れなく加入している

– 入社時に、社会保険の内容と、国保の脱退手続きを案内している

– 退職時に、国保・国民年金への切替や任意継続の手続きを、書面で案内している

– 家族の保険(国保)について、社員が理解している

– 説明資料を、やさしい日本語や母語で用意している

– 厚生労働省・出入国在留管理庁の最新の情報を確認している

よくある質問

Q. 会社員であれば、この制度の影響はありませんか?

給与から社会保険料が天引きされている会社員は、通常は影響を受けにくいと考えられます。ただし、加入漏れや退職後の切替忘れ、家族の保険料の未納などで、影響を受ける場合があります。

Q. 保険料を払う余裕がない場合は、どうすればよいですか?

滞納する前に、市区町村の窓口に相談すると、減免や分割納付などの制度を案内される場合があります。会社としても、困ったときは相談してよいことを、社員に伝えておきましょう。

Q. 滞納していた場合、すぐに在留資格が更新できなくなりますか?

運用の詳細は今後公表される見込みです。方針では「長期間」の滞納が対象とされていますが、具体的な基準は確認が必要です。早めに納付や相談をすることが大切です。

まとめ

– 厚生労働省は、国保料の長期滞納者の在留資格の更新・変更を、原則認めない仕組みを2027年6月から運用する方針

– 納付データを入管の審査と連携し、医療費の不払いの情報も共有するとされる

– 会社員でも、加入漏れ・国保の脱退漏れ・退職後の切替忘れで、未納になるおそれがある

– 2026年10月の社会保険の適用拡大で、切替が必要な社員が増える可能性がある

– 企業は、入社時・退職時の案内と、社会保険の適正な加入を見直しておく

参考

– 日本経済新聞・共同通信などの報道に基づく解説(coki.jp)https://coki.jp/article/news/62332/

– 行政書士法人Tree「永住許可の取消しリスクについて」https://office-tree.jp/blog/immigration/permanent-residency-revocation-risk/

– 厚生労働省「国民健康保険」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/index.html

– 出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン案改定に係る意見募集の結果について」https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000321728