【この記事の要点】
【この記事の要点】
– 2026年度の地域別最低賃金は、全国加重平均で1,177円(前年度から56円引き上げ)となりました
– 発効日は都道府県ごとに異なり、多くの地域で10月から、遅い地域は11月〜12月から適用されます
– 外国人社員も日本人と同じく最低賃金の対象です。月給制でも時給に換算して確認する必要があります
– 特定技能や育成就労では、日本人と同等以上の報酬であることも求められます
– 労働条件通知書の見直し、給与テーブルの調整、助成金の活用を早めに検討しましょう
10月は、最低賃金の改定が順次始まる時期です。外国人社員を雇用している企業にとっては、「うちの給与は新しい最低賃金を下回っていないか」という確認が欠かせません。特に、日本語が十分でない社員は、賃金の不足に気づきにくい面もあります。本記事では、2026年度の改定内容と、外国人社員を雇用する企業が確認すべき実務ポイントを整理します。
2026年度の最低賃金改定の内容
全国加重平均は1,177円
2026年度の地域別最低賃金は、全国加重平均で1,177円となり、前年度の1,121円から56円(約5%)引き上げられました。2025年度の引き上げ幅66円に次ぐ水準です。
都道府県で大きな差がある
報じられている情報によると、最も高いのは東京都の1,280円、最も低いのは宮崎県の1,085円で、その差は195円です。事業所のある都道府県の金額を、必ず厚生労働省の公表資料で確認してください。
発効日は地域ごとに異なる
改定後の最低賃金は、早い地域では2026年10月から、遅い地域では11月、12月から適用されます。自社の事業所がある地域の発効日を確認し、その日から新しい金額を下回らないように賃金を調整する必要があります。
なぜ外国人社員で特に確認が必要なのか
外国人にも最低賃金は当然に適用される
最低賃金法は、国籍や在留資格にかかわらず、日本国内で働くすべての労働者に適用されます。最低賃金を下回る賃金で働かせた場合は、差額の支払いが必要になるほか、罰則(50万円以下の罰金)の対象にもなります。
賃金の不足に気づきにくい
日本語での説明に不慣れな社員は、給与明細や労働条件の変更を十分に理解できないまま働いていることがあります。最低賃金の改定は、企業から丁寧に説明する必要があります。
特定技能・育成就労は「日本人と同等以上」も求められる
特定技能では、日本人が同じ業務に従事する場合の報酬額と同等以上であることが基準とされています。最低賃金を守っていても、日本人社員との報酬のバランスが取れていなければ問題になる可能性があります。育成就労でも、日本人と同等以上の賃金水準が受入機関の要件とされています。
最低賃金チェックの実務手順
手順1:自社の事業所の最低賃金を確認する
事業所のある都道府県の地域別最低賃金を確認します。あわせて、特定の産業に適用される特定(産業別)最低賃金が設定されている場合は、高いほうが適用されます。
手順2:月給制の場合は時給に換算して比較する
月給制や日給制の場合も、時間あたりの金額に換算して最低賃金と比較します。月給から、最低賃金の対象にならない手当を除いて、月の平均所定労働時間で割って確認します。
手順3:対象外の手当を除いて計算する
最低賃金の判定からは、次のような賃金が除かれます。
– 時間外労働・休日労働・深夜労働の割増賃金
– 精皆勤手当、通勤手当、家族手当
– 臨時に支払われる賃金、賞与など
これらを含めて計算してしまうと、実際には最低賃金を下回っていることに気づけません。
手順4:発効日以降の賃金改定と労働条件の通知
新しい最低賃金を下回る場合は、発効日までに賃金を引き上げ、労働条件通知書などを更新して、本人が理解できる言語で説明します。多言語またはやさしい日本語での通知が望ましいです。
手順5:特定技能は契約変更の届出も確認
特定技能では、報酬額など雇用契約の内容を変更した場合に、出入国在留管理庁への届出が必要になることがあります。対象や期限は個別に確認してください。
月給制の換算例(仮の数字で確認)
月給制の場合の確認方法を、仮の数字で見てみましょう。
– 基本給:182,000円(通勤手当・残業代は含まない)
– 年間所定休日:105日、1日の所定労働時間:8時間
– 月平均所定労働時間:(365日−105日)×8時間÷12か月=約173.3時間
– 時間あたりの賃金:182,000円÷173.3時間=約1,050円
この場合、事業所の最低賃金が1,085円なら、約35円足りないことになります。月給が最低賃金を上回っているように見えても、所定労働時間が長い会社では、時給換算すると下回るケースがあります。必ず時給に直して確認しましょう。
社員へのお知らせの文例(やさしい日本語)
最低賃金の改定は、外国人社員にも分かりやすく伝えることが大切です。たとえば、次のような短い文章で案内できます。
「○月○日から、最低賃金が上がります。会社の給料も、新しい金額に変わります。給料の計算の方法は変わりません。わからないことは、○○さんに聞いてください。」
賃金が上がる場合は、いつから・いくらになるかを、給与明細や労働条件通知書で具体的に示しましょう。
年に一度の確認を仕組みにする
最低賃金は毎年改定されます。毎年10月に慌てて確認するのではなく、「7〜8月に目安額が出たら試算、9月に社内で検討、発効日までに通知」といった年間のスケジュールを決めておくと、確認漏れを防げます。外国人社員が多い企業は、人事・総務の担当者の引き継ぎ資料にも、この流れを残しておくと安心です。
引き上げのコストをどう見積もるか
仮に、全国平均の引き上げ幅56円がそのまま時給に反映され、月160時間働く社員がいる場合、1人あたり月に約8,960円の人件費増になります。10人なら月約9万円です。これに社会保険料などの会社負担分も加わります。あくまで単純な試算ですが、外国人社員を多く雇用している企業は、年間のコスト増をあらかじめ試算しておくと安心です。
日本人社員との賃金バランスにも注意
最低賃金の引き上げで、最低賃金に近い水準で働く社員の賃金が上がると、経験年数の長い日本人社員との差が縮まることがあります。賃金テーブル全体を見直さないままだと、社内の不公平感や、外国人社員への報酬基準に関する問題につながるおそれがあります。
活用できる助成金
最低賃金の引き上げに取り組む中小企業・小規模事業者を支援する制度として、厚生労働省の「業務改善助成金」があります。事業場内で最も低い賃金を一定額以上引き上げ、設備投資などを行った場合に、費用の一部が助成されます。対象や上限額は年度によって変わるため、最新の要件を確認してください。
よくある質問
Q. 技能実習・特定技能の社員も最低賃金の対象ですか?
はい。在留資格にかかわらず対象です。
Q. 寮費や食費を給与から引くことはできますか?
控除には労使協定など一定の手続きが必要で、金額も実費相当にとどめるなどのルールがあります。控除後の手取りが不当に低くならないよう、専門家に確認しながら運用してください。
Q. 発効日の前でも賃金を上げてよいですか?
問題ありません。発効日より前に新しい金額に合わせて賃金を引き上げておくことで、確認漏れを防げます。
Q. 試用期間中や研修期間中は、最低賃金を下回ってもよいですか?
試用期間や研修期間であっても、原則として最低賃金を下回ることはできません。例外的に減額が認められる特例には、都道府県労働局長の許可が必要です。許可を受けずに減額すると違反になるため、「見習いだから」と自己判断しないようにしましょう。
Q. 最低賃金を下回っていたことに後から気づいた場合は?
気づいた時点で、速やかに差額を精算し、賃金を是正してください。過去にさかのぼって差額を支払う必要があるため、放置するほど負担が大きくなります。外国人社員への説明は、通訳や翻訳を交えて丁寧に行いましょう。
まとめ
– 2026年度の最低賃金は全国加重平均1,177円(前年度比56円増)、発効日は地域ごとに異なる
– 外国人社員にも最低賃金が適用される。違反すると差額の支払いや罰則の対象になる
– 月給制でも時給に換算し、対象外の手当を除いて確認する
– 特定技能・育成就労では、日本人との報酬バランスも重要
– 労働条件の多言語での説明、給与テーブルの見直し、助成金の活用を早めに検討する
参考
– 厚生労働省「最低賃金制度」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/
– 労務SEARCH「2026年度の最低賃金改定」https://romsearch.officestation.jp/news/58265
– バイトル「最低賃金の改定について」https://www.baitoru.com/solution/?p=20255
– 厚生労働省「業務改善助成金」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03.html