はじめに
自動車整備業界では深刻な人手不足が続いています。国土交通省の調査によると、整備士の有効求人倍率は近年3倍を超える水準で推移しており、特に若手整備士の確保が急務となっています。そうした状況の中で注目されているのが「外国人整備士の採用」です。本記事では、外国人整備士を採用するメリット・デメリットを徹底解説し、採用を検討する自動車整備事業者の意思決定をサポートします。
外国人整備士を採用する5つのメリット
外国人整備士を採用する5つのメリット
1. 深刻な人材不足の解消
2023年度の自動車整備士国家試験の合格者数は約2万人ですが、離職者数がそれを上回る年も増えています。外国人整備士の採用は慢性的な人手不足を補う即戦力として機能します。特定技能制度(自動車整備分野)を活用すれば、試験合格や技能実習修了者など一定のスキルを持った人材をダイレクトに採用できます。
2. 即戦力となる技術力の確保
フィリピン、ベトナム、インドネシアなどの自動車整備士資格保有者の中には、日本と同等またはそれ以上の整備技術を持つ人材が多数います。特にASEAN諸国では日本車の普及率が高く、トヨタ・ホンダ・日産などの整備経験を豊富に持つ整備士が多い点が強みです。
3. 若い世代の労働力確保
外国人整備士は20〜30代の若年層が中心です。日本の整備業界の課題である「高齢化」に対し、若い即戦力を採用することで将来的な技術継承にもつながります。
4. 多様な視点と職場活性化
外国人スタッフの採用は既存の日本人スタッフに刺激を与え、職場全体の活性化につながるケースが多く報告されています。異文化の視点から業務改善のアイデアが生まれることもあります。
5. 採用コストの最適化
人材紹介会社経由での日本人整備士採用と比較して、送り出し機関や特定技能登録支援機関を経由した採用は費用対効果が高いケースもあります(ただし初期費用の計算が必要)。
外国人整備士採用の4つのデメリット・注意点
1. 言語・コミュニケーションの壁
整備業務では口頭・書面でのコミュニケーションが不可欠です。顧客対応、整備記録の記入、社内連絡など日本語能力が求められる場面が多く、日本語教育への投資が必要です。
2. 在留資格管理の負担
在留資格(ビザ)の更新手続き、各種届出など、外国人雇用特有の行政手続きが発生します。社内での担当者設置または行政書士・社会保険労務士への委託が必要になるケースがほとんどです。
3. 日本の自動車整備士資格の取得
日本の自動車整備士国家試験(1・2級)は日本語での受験が必要です。外国人整備士が日本の資格を取得するまでの期間、整備作業の範囲に制限が生じる可能性があります(整備主任者の監督下での作業は可能)。
4. 生活サポートの負担
住居の確保、銀行口座開設のサポート、公共料金の手続き補助など、外国人スタッフの生活面でのサポートが求められます。特定技能の場合、登録支援機関への委託でこれらを外部化することも可能です。
採用に向いている事業所・向いていない事業所
【向いている事業所】
・整備士の採用が2年以上困難な状況にある
・社内に外国人サポートの体制を整える意欲がある
・研修・教育への投資ができる
【慎重な検討が必要な事業所】
・経営者・管理者が行政手続きを全て自社対応するリソースがない
・日本語教育や生活サポートのコストを負担できない
・短期間での即戦力のみを求めている
まとめ
外国人整備士の採用はメリットが大きい一方、適切な受け入れ体制の整備が成功の鍵です。在留資格の理解、日本語教育の仕組み、生活サポートの体制を整えた上で採用を進めることで、長期的な戦力として活躍する外国人整備士の確保が実現します。
参考情報
国土交通省 自動車整備人材確保・育成推進協議会:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr7_000043.html
出入国在留管理庁 特定技能制度:https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nyuukokukanri07_00127.html