2026年6月から、在留カードとマイナンバーカードが1枚に一体化した「特定在留カード」の運用が始まります。外国人従業員を雇用する企業にとっては、入社時の身分確認やマイナンバー収集の実務フローに関わる制度変更です。本記事では制度の概要と、企業が押さえておくべきポイントを解説します。
「特定在留カード」とは
在留カードとマイナンバーカードが1枚に
これまで別々に所持していた「在留カード」と「マイナンバーカード」が、本人の希望により1枚のカードとして発行されるようになります。法律上の名称は「特定在留カード」です。見た目は基本的に従来の在留カードの様式を踏襲しつつ、カード裏面にマイナンバー(個人番号)が記載されます。
1枚で2つの機能を兼ねる
特定在留カードは、在留カードとしての身分証明機能(在留資格・在留期限の証明)と、マイナンバーカードとしての行政手続き・公的個人認証機能を、1枚で兼ね備えます。あくまで「希望者向け」の制度であり、従来どおり在留カードとマイナンバーカードを別々に保有し続けることも可能です。
発行までの日数に注意
特定在留カードは、通常の在留カードよりも発行に時間がかかる見込みで、通常の手続きに加えて10日程度余分にかかるとされています。入社直前に切り替えを希望する従業員がいる場合、通常の在留カード更新よりもスケジュールに余裕を持たせる必要があります。
制度導入の背景
行政手続きの重複解消による効率化、外国人住民の利便性と生活基盤の強化、デジタル社会の実現に向けた基盤整備が主な狙いとされています。カードが1枚に集約されることで、行政手続きの際の持参書類が減り、外国人労働者本人の負担軽減にもつながると期待されています。
企業が確認すべき実務ポイント
入社時の在留カード確認フローへの影響
採用時には引き続き、在留カードの提示を受けて在留資格・在留期限を確認する必要があります。特定在留カードを保有する従業員の場合も、表面の記載内容を確認する基本的な流れは変わりませんが、裏面にマイナンバーが記載されている点を踏まえ、コピー・保管時の取り扱いには注意が必要です。
マイナンバー収集業務との関係
特定在留カードには裏面にマイナンバーが記載されているため、雇用時のマイナンバー収集手続きと連動する場面が出てくる可能性があります。マイナンバーは特定個人情報として、通常の身分証明書以上に厳格な管理(利用目的の明示、安全管理措置、保管期間の制限など)が求められる点を、人事担当者間で改めて確認しておきましょう。
更新スケジュールの案内
特定在留カードへの切り替えは任意ですが、希望する従業員には発行までの日数が通常より長くなることを事前に案内しておくと、在留期限管理におけるトラブルを防げます。社内の在留期限管理システムやチェックリストに、切り替え希望者向けの余裕期間を組み込んでおくとよいでしょう。
多言語での案内資料の準備
制度の切り替えは任意である一方、外国人従業員本人にとってはメリットが大きい可能性もあります。母国語やわかりやすい日本語で制度概要をまとめた案内資料を用意し、希望者が自分の判断で申請できるようサポートする姿勢が望まれます。
よくある質問
Q. 特定在留カードへの切り替えを従業員に強制することはできますか?
特定在留カードはあくまで希望者向けの制度であり、企業が従業員に切り替えを強制する性質のものではありません。従業員本人が行政手続きの利便性などを踏まえて任意に判断するものと理解しておく必要があります。
Q. すでにマイナンバーカードと在留カードを別々に持っている従業員は、そのままでもよいですか?
問題ありません。特定在留カードは新しい選択肢が増えたという位置づけであり、従来どおり2枚を別々に保有し続けることも引き続き可能です。
Q. 特定在留カードの発行後、在留カードとしての確認方法は変わりますか?
基本的な確認事項(在留資格の種類・在留期限など)は従来の在留カードと同様です。裏面にマイナンバーが記載されている点を踏まえ、コピーの取り扱いや保管方法について社内ルールを整理しておくと安心です。
人事・総務部門での運用ルール整備のおすすめ
特定在留カードの取り扱いは、在留カード管理とマイナンバー管理という、これまで別々に運用してきた2つの実務が交差する場面です。在留カードの確認・保管を担当する部署と、マイナンバーを取り扱う給与・税務担当部署が異なる企業も多いため、特定在留カードを提示された場合の受け渡しフロー、閲覧できる担当者の範囲などを事前にすり合わせておくことをおすすめします。属人的な対応にならないよう、簡単な手順書を作成しておくと安心です。
他の身分証明手続きへの影響も視野に入れる
特定在留カードの導入は、外国人労働者本人の生活面にも波及します。銀行口座の開設、携帯電話の契約、住居の賃貸契約など、これまで在留カードとマイナンバーカードを別々に提示していた場面で、1枚のカードで手続きが完結できるようになる可能性があります。企業が住居サポートや生活オリエンテーションを行っている場合は、こうした周辺手続きの簡素化についても、あわせて案内できると親切です。
今後の運用に向けて
特定在留カードは2026年6月に開始されたばかりの新しい制度であり、実際の運用が始まってから細かい取り扱いが明らかになっていく部分も少なくありません。出入国在留管理庁や地方自治体の窓口から発表される最新情報を継続的に確認し、社内の在留カード確認・マイナンバー管理のマニュアルを随時アップデートしていくことが重要です。
まとめ
– 2026年6月、在留カードとマイナンバーカードが1枚になる「特定在留カード」の運用が始まった
– 希望者のみが対象で、従来どおり別々にカードを保有することも可能
– 発行には通常の在留カードよりプラス10日程度かかる見込み
– 入社時の在留カード確認フロー、マイナンバー収集業務双方への影響を踏まえた運用ルールの整備が必要
– 従業員への案内資料を用意し、切り替えを希望する人が判断しやすい環境を整えることが望ましい
参考
– apseeds HR BLOG「【2026年6月】在留カードとマイナンバーカードの一体化による実務のポイント」https://blog.apseeds.co.jp/residence-mynumber-merger/
– プランナー行政書士事務所「【2026年6月開始】在留カードとマイナンバーカードの一体化とは」https://planner-nagoya.jp/blog/detail/20251213070711/
– 出入国在留管理庁「在留カード等に関する情報」https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/index.html
– 厚生労働省「外国人雇用に関する法律」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/index.html