はじめに
外国人整備士の採用は多くの事業者が初めての試みとなります。先行して採用を進めた事業者の成功事例と、失敗から学んだ教訓を知ることは、これから採用を検討する事業者にとって非常に有益です。本記事では、複数の整備事業者の事例をもとに、成功のパターンと失敗の原因を解説します。
成功事例1:地方の中小整備工場がベトナム人整備士を採用(特定技能)
【概要】
北関東の認証工場(従業員8名)が、ベトナム人整備士2名を特定技能1号で採用。
【成功のポイント】
・採用前に登録支援機関と契約し、手続きを全面委託した
・入社前から日本語のオンライン授業を3ヶ月間実施(会社負担)
・ベトナム人スタッフ向けの整備用語集(日本語・ベトナム語対訳)を自作して工場内に掲示
・入社後6ヶ月でバディ(先輩整備士)を外し独立作業を開始
・入社2年後に3級整備士合格、受験費用全額会社負担
【結果】
2名とも3年以上在籍。2級整備士に向けて現在勉強中。工場の生産性が20%向上し、採用困難だった人材不足を解消。
成功事例2:大手ディーラーグループがフィリピン人整備士を組織的採用
【概要】
関東の自動車ディーラーグループ(店舗数15)が、フィリピン人整備士10名を計画的に採用。
【成功のポイント】
・本社に「外国人採用推進チーム」を設置
・フィリピンの送り出し機関と直接提携(コスト削減)
・入国前研修(日本語・日本文化)を現地で3ヶ月実施
・専用の寮を整備し、全スタッフの住居を確保
・日本語能力N3取得者には月2万円の資格手当を付与
【結果】
採用後の離職率が日本人新卒採用と同水準(15%以下)を達成。フィリピン人整備士が日本人顧客から高評価を受けるケースも多数。
失敗事例1:受け入れ体制を整えずに採用し早期離職
【概要】
九州の小規模整備工場が、特定技能外国人を初めて採用。
【失敗の経緯】
・登録支援機関を活用せず、手続きをすべて自社で対応しようとした
・入社後の日本語サポートが何もなく、作業指示が伝わらない場面が多発
・日本人スタッフから「言葉が通じない」と苦情が続き、外国人スタッフが孤立
・入社4ヶ月で退職
【教訓】
受け入れ体制(登録支援機関の活用・日本語教育・バディ制度)を整えることが採用成功の前提条件。コスト削減のために体制を省略することは逆効果になる。
失敗事例2:給与設定の誤りで在留資格取消リスク
【概要】
中部の整備工場が技能実習から特定技能に切り替えた際、給与設定を誤った。
【失敗の経緯】
・特定技能外国人に対して最低賃金をわずかに上回る水準の給与を設定
・同等業務の日本人整備士より1〜2割低い給与水準だった
・監査で「同等の日本人との同等以上の報酬」の要件を満たしていないと指摘された
・改善指導を受け、遡及して差額を支払う羽目に
【教訓】
「同等業務の日本人と同等以上の報酬」は厳格に守る必要がある。採用前に日本人スタッフの給与水準を確認し、同等以上の設定を確実に行うこと。
成功事例・失敗事例から導かれる7つの教訓
1. 登録支援機関を積極的に活用する(コスト削減より体制の整備を優先)
2. 採用前から日本語教育を開始する(入国前研修が理想)
3. バディ制度で職場の孤立を防ぐ
4. 給与は必ず「同等の日本人以上」に設定する
5. 住居の確保は採用の競争力になる
6. 資格取得支援(費用・時間・インセンティブ)を整備する
7. 定期的な面談で早期に問題を把握・解決する
まとめ
外国人整備士採用の成功と失敗を分けるのは「受け入れ体制の整備度」に尽きます。採用前の準備に時間と費用を投じた事業者ほど、長期的に外国人整備士の活躍を実現しています。先行事例の教訓を活かし、自社に合った受け入れ体制を一歩ずつ構築していきましょう。
参考情報
国土交通省 外国人整備士受け入れ事例:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr7_000043.html
JICOA 外国人整備士マッチング:https://www.jicoa.jp/